虚数パンのお話

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組織はいつだって不合理 - 私たちが疲れる理由

1. 組織と個人

この国の大半の人々は何らかの「組織」に属して働いています。

 

組織は人々の能力をつなぎ合わせ、より合理的な結果をもたらしますが、時に全体として不合理な振る舞いを見せ、個人を蔑ろにすることもあります。

 

一般的に見て、個人が組織に属することによるメリット、デメリットの感じ方には非対称性があるようです。

 

企業の利益や保険料など、煩雑な事務作業を組織が受け持ってくれることについて私たちは無頓着であり、また、組織の業績が個人に還元されにくいことに対し、タテ割りの事務によグループ同士の軋轢や上司の管理能力の問題など関しては、私たちはひどく敏感だからです。

 

この感じ方の非対称性が私たちの「組織疲れ」を助長させていきます。

 

・上司は部下の何をみているのか... 

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また、組織を維持するため「だけ」に行われる社員旅行や飲み会などの行事が私たちのプライベートな時間を奪います。

 

そしてお金を払って聞かされるのは上司のお説教や仕事の愚痴ばかりとくれば、私たちは疲弊するばかりです。

 

ここで一度、私たちを疲弊させる組織の不合理についてまとめてみましょう。

 

 

2. 何が私たちを疲れさせるのか

組織を不合理にするものの多くは、組織そのものを維持するために払うコストの中に見出されます。

 

例えば、以下のようなものがあげられます。

 (1)グループ間での仕事の押し付け合い

 (2)煩雑な決済システム(稟議制による合意形成の長時間化)

 (3)組織内での根回し

 (4)「親睦を深めあう」ための飲み会や社員旅行

 (5)無意味な会議

では、1つずつ見ていきましょう。

 

(1)グループ間での仕事の押し付け合い

ある程度大きな組織になると、組織はグループごとに専門性を持たせようと試みます。経理、営業、開発、etc...。

 

これによりそれぞれのグループは専門領域に集中できるというメリットがありますが、同時に線引きの曖昧な仕事やイレギュラーな業務について、各グループ間で水面下の押し付け合いが始まります。

 

個人は自分の属するグループの業務以外に無関心になり、俯瞰でものを見るバランス感覚が失われていきます。

 

(2)煩雑な決済システム(稟議制による合意形成の長時間化)

 日本特有の稟議制というシステムによって、社内の合意形成は非常に長期的で煩雑なものになっています。

 

末端の社員は、決済を用意して、上司に説明して、ハンコをもらって...。その途中に誤りがあれば、差し替え作業や内容の修正を報告しなければなりません。

 

一度で決裁権者の了解を得られればどんなに楽でしょうか。

 

稟議制は組織の合意形成と決定を慎重に行うために用いられるシステムですが、合意の長期化や責任者が不明瞭になりやすいという点で、非常に問題のあるシステムです。

 

(3)組織内での根回し

 「根回し」と聞くと国政を思い浮かべるかもしれませんが、あなたの会社でもごく普通に行われているのではないでしょうか。

 

たとえば、ある決定をする際に上司や重役に前もって合意を得ておくための「おことづけ」です。

 

後で上司と担当の間に齟齬があっては困るため、このような行為を頻繁に行う組織もあります。

 

この作業の煩雑なところは、一つ上の上司へ根回しをする際、「ワンペーパーでまとめろ」といった資料の作成や整理を求められるところです。

 

また、基本的には担当レベルから係長等を通して上司へ報告がされるため、担当が異なる上司へ何度も同じ説明をするなど、非効率な作業を求められることも少なくありません。

 

・根回しという名の伝言ゲーム

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(4)「親睦を深めあう」ための飲み会や社員旅行

飲み会や社員旅行は社員の親睦を深めるために当然行われるべきだ、そう考えている上司があなたの周りにもいませんか。

 

この根強い思想は、「仕事は人間関係で決まる」という確固たる信念に基づいて生まれるものです。

 

人間関係を醸成するというと聞こえは良いですが、大抵は上司の憂さ晴らしの場となっているのが現状です。

 

部下へのお説教やセクハラまがいの言動など、部下は上司に接待をする羽目になる訳ですから、「親睦を深める」などというのはあまりにも戯言に思えてしまいます。

 

・家族に相手してもらえないのかしら...

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(5)無意味な会議

「一体何のためにこんな会議開いてるんだろう」と思ったことはありませんか。

 

大きな組織になるほど、私たちは無駄な会議に付き合わされます。

 

実際はすべて根回しにより決定されている会議、ただ最終合意を得るためだけに行われる会議です。

 

そしてこのような会議のために、末端の職員は膨大な資料を作成しなければなりません。

 

合意形成の場であるはずの会議が限りなく形骸化され、無意味ともいえる資料作りに一日を費やすことは、末端社員が払っている明らかな維持コストなのです。

 

3. コストの支払請求書は末端社員に届く

これまで見てきたように、組織を維持するために必要(?)なコストを払う者は、ほとんどの場合末端の社員なのです。

 

無駄な資料を一夜漬けで作ること、飲み会で上司におべっかをつかうこと、これらはあなたの上司はやってくれません。

 

会社の維持コストの支払請求書は、いつでも末端社員に届くようになっています。

 

この事実が悲劇的である理由は、これらの無駄とも思える作業はほとんど個人の能力の向上に役立たないからです。

 

ただつまらなく、ただ煩雑な作業を終えた後に残るものは、雀の涙ほどの残業代だけです。

 

4. これからの組織との向き合い方

「組織疲れ」は組織の不合理を目の当たりにすること、そして組織の維持コストを払わされることで蓄積されるものです。

 

私たちはこれからも、この不合理を甘んじて受け入れなければならないのでしょうか。

 

残念ながら、大きな組織はそう簡単にあなたの望む方向に変わってはくれません。組織が古臭い伝統を継承し続け、これからもあなたを苦しめ続けない保証はないのです。

 

転職、フリーになるなど、組織を離れる方法は安易に提示することはできても、実際はそう簡単な話でもありません。

 

しかし、悪しき伝統は私たちに降りかかってくるとしても、それを自分たちの世代で止めることはできます。

 

私たちの後輩が私たちの上司のようにならないために、組織の業務に対して常に批判的な目線を持つことを忘れてはいけません。